肥土山農村歌舞伎舞台 第二幕

平成22年10月23日 小豆島 肥土山農村歌舞伎舞台 第二幕「恋女房染分手綱 重の井子別の段」
小学生による子供歌舞伎です。時々出だしを忘れて、お囃子の先生から台詞をささやいて教えてもらったりしていましたが、それ以外は大人顔負けの演技でした。
お姫様役の子はいつも振袖の袖を持ち上げていて「いやじゃ、いやじゃ」と首を振る。

お守り役の重の井のだんだん声をあげて笑う「ほっ、ほっ、ほお」には思わずこちらも笑いがでる演技上手です。
小学2年生かな・・・小さな体の子役(本当は皆子役だけど)の馬追いの子が、母の重の井に一緒にいたいとすがる場面には泣かされました。子役の泣きの演技にはおひねりがたくさん投げ込まれました。


衣装も絢爛豪華で、子供サイズに揃えてあり、歌舞伎にかける心意気と気合に伝統を感じました。


「恋女房染分手綱」は、宝暦元年(1751年)に大阪 竹本座で初演された吉田冠子・三好松洛の合作で、全13段からなる。宝永4年(1707年)に初演された近松門左衛門の『丹波与作待夜の小室節』を改作したもので、『重の井子別の段』はその10段目。 関東へ下って入間家へ嫁入りすることになった、由留木家の息女 調姫(しらべひめ)、今日はその出立の日です。ところが、出立間際になって「いやじゃ」と言い出します。そこに"じねんじょの三吉"と呼ばれる子どもの馬子が呼び込まれ、姫に道中双六を披露します。姫は双六にも勝って上機嫌に。褒美の菓子とお金をもらった三吉は、乳母 重の井の名を聞き、「俺が母様じゃ」と縋りつきます。証拠の守り袋を見た重の井は、三吉こそ別れた夫、伊達与作との間にできた一子、与之助であることを知りますが、乳兄弟に馬方がいることで姫君に傷がつくのを恐れ、今では子でも母でもないと突き放します。母を恨む三吉。重の井は我が子を抱くこともならない奉公の身を嘆きます。我が子への愛着の情と、養君への忠義の狭間で葛藤する重の井。やがて出立の時刻となり、三吉は涙ながらに馬子唄を歌います。「坂は照る照る 鈴鹿は曇る。間の土山雨が降る。」降る雨よりも親子の涙、中に時雨る雨宿り。 重の井の葛藤、自らを否定された三吉(与之助)の絶望、二人の思いを乗せた段切の馬子唄も聴きどころのひとつです